【キブンの時代】第1部 考えはどこに(7)他人の意見「コピペ」(産経新聞)

 ■ネットで作られる群集心理

 神奈川県の会社員、小野田信行(31)=仮名=は仕事から帰ると、パソコンでインターネット巨大掲示板群「2ちゃんねる」をのぞくのが日課になっている。その日のニュースなどについて一般のネットユーザーがコメントを書き込むネット上の掲示板群。その中に、批判や揶揄(やゆ)の書き込みが殺到する「祭り」がないかチェックするためだ。

 タレントの不祥事、政治家の失言、一般人の非常識な行動…。祭りのネタは尽きない。書き込みは匿名が原則。1つの掲示板に多いときで数万人がアクセスすることもあり、サイバー空間での“群衆”を形成している。そこに小野田も参加するのだ。

 「多くのユーザーがいる掲示板で、うまい書き込みをして、自分と同じようなユーザーに喜んでもらえると気持ちがいい」。仕事や私生活に不満があるわけではないが、「ネットに“いる”ときの方が楽しい」と打ち明ける。

 小野田は自分のことを「ネト充」と呼ぶ。リアル(現実)よりネットで精神的に充実していることを指すネット用語だ。いわゆる引きこもりをイメージしがちだが、普通の社会生活を送っている会社員や大学生でも、現実の生活よりネット上での“生活”に比重を置いていれば、ネト充と呼ばれる。リアルとネットを行き来しながら、ネットで気分よく生活している。

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 引きこもりやオタクに詳しい精神科医の斎藤環(48)は「ネト充は頭がよく、仕事上のコミュニケーションはできる人も多い。しかし、リアルでプライベートな人間関係を築くのがあまりうまくない。リアルで吐けない意見をネットに書き込み、認められると充足感が高い」と話す。

 考えてもいないことを書き込むケースもある。

 茨城県の大学3年、三宅陽一(21)=仮名=は昨年4月、ある男性アイドルの不祥事をネタにした祭りに参加した。このアイドルに特に関心があったわけではない。「祭りが大きくなればなるほど、参加していることを誇らしく感じた」からだという。

 「実際に思っていないことでも、スレッド(掲示板)に特有のパターンがあり、それに合わせて気分で書き込んでしまう」と、関西学院大助教(社会学)の鈴木謙介(33)は分析する。

 考えなくても気分で発信できるのは「ネットは匿名性が高いため」と話すのは、中央大大学院助教(情報社会学)の折田明子(34)。「名乗らない環境では自分で考えなくなり、周囲と同じようにすることが気持ちよくなる」と解説、ネットの群集心理が気分のままの書き込みを後押しするという。

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 日常生活でインターネットを使うネット人口は今や9千万人といわれる。世界中の話題が俎上(そじょう)に載り、さまざまな考えが書き込まれ、家にいながらにして多くの声に触れることができる。

 「そう思うことに危うさがある」と折田は警告する。

 「ネットを見ていると、結局はネットの中の大勢が作り上げた気分に乗ってしまいがち。乗せられて書き込んでいるうちに自分が考えたことだと思い込むようになり、その気分のままに現実の世界で話したり行動したりするようになる。実際には、他人が考えたことを選択させられたにすぎないのに…」

 そんな意見に小野田は少し考えて言った。「自分が書き込んだことがコピペした(写した)知識であることは分かっているけど…ネットの楽しさが優先してしまうんです」(敬称略)=第1部おわり

 (この連載は将口泰浩、安藤慶太、小川記代子、赤堀正卓、池田証志が担当しました)

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